
ブックカバーチャレンジ三日目。
今日は、ちょっとルール違反して2冊同時の紹介です。
フィリス氏の馬術。
サンファール大尉の馬術。
言わずとしれた、馬術の基本書です。
この2人はたまたま同じ時代に産まれた、名馬術家。
別の時代に産まれれば、それぞれが時代を代表する馬術家であったろうといわれています。
このふたりがライバル心剥き出しで論戦しているのも、この2冊の読みどころです。
2人は議論が高じ、当時のメジャー新聞のパリ新聞で公開紙上討論まで展開しました。
当時のヨーロッパでは、馬術論が社会問題になる程、馬が生活・文化に密着していたのかと驚きます。
実際、本書のなかでは現代乗馬では考えられないような状況も説明されてます。
いわく、河に馬と共に転落した際に馬と一緒にじょうずに泳ぎ切る方法など和式馬術における水馬の術に相当する解説もあります。
この2冊、結局は馬術の本なので技術目的は同じところにあります。
それは、馬術の基本術理である「収縮」をいかに完成させていくかです。
収縮とは、ざっくばらんに言えば縦に長い馬の馬体を短くする技法です。
長い棒より短い棒の方が振り回しやすいのと同じように、馬体も短ければ少ない労力でより複雑な指示が出来るというわけです。
実はこれが乗馬と馬術の違いになっていくのですが、
馬を短くすると言葉で言うものの実際やろうとするとかなり難しいものです。
フィリスはその際、馬の口の作り方を重視します。
サンファールは、後駆の踏み込みを重視します。
サンファールは、工科学校を出た軍人なので原理原則に厳しく力ずくの部分もあります。
フィリスは、サーカス出身と言うこともあるのか、少し技巧的です。
これらの違いは、お互いの環境・キャリア・年齢などの違いによるところでどちらが正しいと言うものではないでしょう。
現代の我々は、彼らの本を読むことでより馬術の基本術理である収縮について理解を深め、そのきっかけを掴む事ができるでしょう。
ちなみに前述のパリ新聞での公開討論は、拍車の目的がテーマでした。
拍車。
実は現在においても拍車の使い方は、いろいろな議論があり結論は出ていません。
フィリスは、拍車を馬に指示を与える扶助の道具としています。
サンファールは、拍車を鞭と同じく懲戒の道具としています。
どちらにしても、明確な目的意識を持って両名とも拍車を使用しています。
ただ漫然と、上級者だからといって拍車を付けたり、格好つけで拍車をはかせるホースマンは、反省しなければなりません。
ワタシも子供の頃、そろそろ拍車を使って馬に乗ろうという頃、先生に拍車をねだりました。
そのとき貰ったのが、写真の拍車。
輪拍と呼ばれる、非常に鋭いものでとても使いこなせるようなものではありませんでした。
こんなのでうっかり馬腹を触ろうものなら、馬はぶっ飛んでいきます。
まあ、オモチャの刀をねだったら真剣を渡されたようなものです。
騎兵将校だった坂上先生は、当時の僕にはひたすら優しいお爺ちゃんだったんですけど、要所要所で厳しくしつけてくれたものです。
フランスの諺にある、「拍車も猿が使えばカミソリの刃」をこうやってワタシに教えたのでしょう。
拍車の使用は、動物愛護の観点から批判にさらされています。
結果、先の丸いものや短いものをファッションのように履き、かえってだらしなく使うものが多い気がします。
う〜ん、ワタシが言うはなしではないか、、、